病気の疑いがあると検査をする。
不安でたまらない。
そして、その日から地獄の日々が始まる。
検査結果までの毎日をどう過ごせばいいのかわからない。
寝ても覚めても不安に押しつぶされそうになる。
妻が腎臓病の疑い

僕の妻は膠原病という持病がある。
自分自身を攻撃してしまう難病で、ひどくなるといろんな病気を併発してしまう。
だから2ヶ月に1回通院している。
通院では、毎回尿検査と血液検査をし診てもらう。
今から1年ほど前から蛋白尿が出始めた。
でも不思議なことに2ヶ月ごとに変動するのだ。
2+→±→2+→±・・の繰り返し。
おまけに潜血尿も出始めた。
これはもしや・・
ネット情報ではほぼ確定
ネットで色々と調べる。
どのサイトを見ても、蛋白尿と潜血尿が出たらほぼ腎臓病の疑いがあるとのこと。
これは大変だ。
他にも初期症状などを調べると、
・浮腫
・頻尿
・夜間頻尿
・尿の泡立ち
・発熱
などと書かれているが、全てが当てはまるわけではない。
妻は目の瞼が浮腫んでいるというが、僕から見るとそう思うほどのことではない。
浮腫はもっと腫れぼったくなる。
でも妻自身は絶対に浮腫という。
失礼なことを言えば、僕的には年相応の加齢的なことなのでは?と思った。
現に数年前の妻を撮った写真を見返しても、そんなに変わってない。
不安が募ると、そう思えてくるという錯覚になっているのでは、とも感じていた。
でも蛋白尿と潜血尿は2ヶ月ごとに交互に出る。
かかりつけの先生に聞くも経過観察

2ヶ月の定期検診で蛋白尿と潜血尿が変動する。
陽性反応が出るたびに担当医に聞くが、返答はいつも一緒。
「〇〇さんは変動があるんですよね。それに血液検査を見ると腎臓機能は落ちていません。経過観察ですね。」
いやいや、ネットには蛋白尿と潜血尿が出た時点でほぼ腎臓病とどこのサイトにも載っている。
これは担当医を信じた方がいいのか、ネット情報を信じた方がいいのか、
訳がわからない。
意を決して受診
ちょうどこの変動を繰り返して1年目の定期検診で、僕も妻と同席した。
その変動は腎臓病の可能性がないのかと質問する。
担当医は頭が良すぎるのか、はっきりと分かるような返事が返ってこない。
わかったようなわからないようなむにゃむにゃした回答。
もうこれ以上、経過観察は我慢できないので腎臓内科を受けたいと懇願した。
先生も「そこまで心配なら当院は腎臓内科がないので病院を決めてくれれば紹介状を書きます」と言ってくれた。
こうして腎臓内科を受けることとなった。
手遅れになってなければいいが…
地獄の日々の始まり

紹介状が手に入ると、他の病院の腎臓内科に行き今までの経緯を話した。
腎臓内科の先生は、
「ここまで蛋白尿と潜血尿が出ているのは何かしらの原因がある可能性が高いですね。今日はこの後、血液検査と尿検査と腎臓のエコー検査を受けていって下さい。」
と告げられた。
やっぱりそうなんだ。
腎臓専門の先生がその疑いがあるというからには、かなり確率が高いではないか。
妻と2人でどんよりと落ち込む。
この日は言われた検査を全て受け帰宅。
帰路も2人の会話は暗い話ばかり。
手遅れで透析になったらどうしよう。
あの時もっと早めに受診しておけばこんなことにならなかったのに。
暗い未来と後悔の話ばかりになる。
検査結果が出るのは1週間後。
ここからが地獄の日々の始まりだった。
家族もどう接していいのか全くわからない
家に着いてからも、妻はずっと下を向きながらため息が絶えない。
テレビを見ている時も食事をしている時も、何をやっている時もどんより。
1番最悪な状態が朝だ。
妻が起きるともう空気で分かる。
聞こえるか聞こえないぐらいの声で挨拶を交わす。
僕も少しでも妻の近くにいて励まそうと色々な言葉をかける。
でも何も響かない。
響かないどころか罵声が返ってくる時も。
「結局あんたは他人事なのよ。そんななんの感情もない言葉をかけられても余計にムカつくだけ!」
こんなことを言われると、もう何も言えなくなる。
僕も腎臓病や蛋白尿のことなどを何度も何度も調べたが、明るい情報は何1つ出てこない。
だから大丈夫だよとも言えないし言ったところで
「何が大丈夫か言ってみて!」
と言われたこともあった。
段々となんと声をかけていいいのかわからなくなる。
しまいには黙っていると
「なんで黙っているの?何かかける言葉がないの!本当に冷たい人だね!!」
と尖った声で発する。
完全に地獄だ。
本人が1番辛いだろうけど家族もつらい。
明るい言葉も同情の言葉も、ただの聞き役になっても妻は攻撃的になる。
でもそれほど辛いんだ。
僕よりも何十倍何百倍と辛いんだと自分にいい聞かせ、一緒に地獄の時間を耐える。
やっと辿り着いた検査結果当日

検査結果までの1週間は本当に辛かった。
時間が過ぎるのがこんなにも長いと感じたことはなかった。
感覚的には、検査をした1週間前のことが1ヶ月前ほどに感じるほどだった。
検査結果当日も、病院に行くまでの足取りは重い。
でもここまできたら腹を括るしかない。
妻はため息ばかり。
半分鬱状態なのでは?と思うほどだ。
それでも結果を聞かなくては何も始まらない。
僕もかなり心臓がバクバクした。
妻が結果を聞いて倒れるのでは、と思うほど心配だった。
そして妻の腎臓病が進行していたらと思うと、2人の未来はもうないと感じていた。
検査結果は…
僕も一緒に聞こうとしたが、妻は1人で聞くといって診察室に入っていった。
僕は診察室の真ん前の椅子に座り、妻が出てくるのをじっと待っていた。
妻が診察室に入って5分、10分、12分、15分と過ぎていく度に、酷くなっているから1つ1つ丁寧に説明されているんだと勝手な想像をする。
20分ちょっと過ぎたあたりに妻が出てきた。
まずは表情を見る。
想像していた顔と全く違う。
結果は腎臓病の一種で糸球体腎炎の疑いだった。
詳しい検査は「腎生検」という検査入院が必要とのこと。
でもこれは予測していた。
ネットを食い入るようにみていたから、2人で腎生検をするのは間違いないと話し合っていた。
ただ妻が明るい表情だった理由は、
- 急速糸球体腎炎ではなかった
- 早期発見の状態
- 腎臓機能は正常
だったこと。
これには僕も大喜び。
腎臓は、1度機能が落ちてしまうと戻らない怖い病気。
正常な状態のうちに、腎臓病の種類を特定して食い止めればなんとかなる。
妻も同じ考えだったからかなり明るい表情。
こんな笑顔を何ヶ月ぶりにみたのか。
とにかく良かった。
検査入院は必要だけど、これで特定すれば治療に入れる。
妻も1年間悩み続けたモヤモヤがスッと晴れたようだ。
腎臓病になったことは嬉しいことではないけれど、原因がわかり治療をすればまだなんとかなる状態。
この1週間は本当に長かった。
最後に

妻は腎臓病という嬉しい結果ではなかったが、まだ機能も落ちてないので不幸中の幸い。
しかし今回のこの件で、膠原病からの腎臓病も可能性があるとのこと。
それを聞いて膠原病の担当医を疑ってしまう。
2ヶ月に1回の定期検診をしているにもかかわらず、この前の検診の時に腎臓内科を受けたいと我々が言わなかったら、また経過観察だったのだ。
危ない。
非常に危ない。
腎臓の機能が落ちてからでは遅いんだっと思うと、ぎりぎりのラインだったのかもしれない。
もちろん医者だから、我々には知らない何かボーダーラインのものがあるかもしれないが、それでも怖い。
今回の件でいくら医者が大丈夫だと言っても、自分達が納得しないならとことん納得できる病院や先生に診てもらった方がいいという教訓を得た。
しかし検査結果が出るまで、本人・周りの家族はどう接すればいいのか。
それもかなりの問題だということも同時に味わった。
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